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IDM definitive 1958 - 2018
なぜ1950年代から……?
このタイトルを目にした方がたの多くは、まずそこに戸惑いを覚えることだろう。でも、まさにそこにこそこの本の秘密がある。
IDMすなわちインテリジェント・ダンス・ミュージックという言葉は90年代に作られたものだ。それはハウス・ミュージックより後に生まれた概念であり、ダンスを出自としながらそこに留まらないことを希求する、ひとつのオルタナティヴな態度でもある。とはいえ、その言葉に含まれる「インテリジェント」という部分がどうしても「それ以外のダンス・ミュージックには知性がない」というニュアンスを帯びてしまうため、その呼称を忌避する者も多い。それゆえUKや欧州では当時からエレクトロニカという言葉も用いられ続けてきたわけだが、不思議なことに合衆国ではその語はプロディジーやケミカル・ブラザーズのような音楽を指すために使われることとなった。このような奇妙なねじれ、このような言葉の揺らぎそのものに、IDM/エレクトロニカという音楽の持つ特質、すなわちそれを他とわかつ決定的な指標が潜んでいるのではないか? であるなら、その前史を振り返ってみることもまた有意義なことなのではないか?
とまあ、堅苦しい言い方になってしまったけれど、本書はディスクガイドである。IDM/エレクトロニカとはいったいなんなのか――それについてどう考えるにせよ、その中心にエイフェックスがいることは間違いない。近年では、彼を筆頭とする90年代のIDM/エレクトロニカから大いに影響を受けたラナーク・アートファックスのような新世代が台頭してきている。あるいはそこに〈CPU〉やブレインウォルツェラ、バイセップやダニエル・エイヴリーなどの名をつけ加えてもいい。昨年『ピッチフォーク』が「The 50 Best IDM Albums of All Time」という特集を組んだことも話題となった。いま、90年代前半に起こった音楽的旋回がさまざまな形で参照され、新たな意味を帯びはじめている。
そのような今日だからこそ、この『IDM definitive 1958 - 2018』はあなたに音楽の新たな聴き方を提供する。エイフェックスを起点として過去と未来とその双方に向けて放たれた無数の矢、選び抜かれた800枚以上のタイトルがいま、あなたに聴かれることを待っている。
IDM definitive 1958 – 2018
監修・文:三田格
協力・文:デンシノオト
文:野田努、松村正人、木津毅、小林拓音
<目次>
Chapter 1
Musique concrète / Synthesizer Music (1958~1965)
Chapter 2
Sound Effects (1966~1971)
Chapter 3
Improvisation / Composition (1972~1979)
Chapter 4
New Wave / Industrial (1980~1989)
Chapter 5
Braindance (1990~1993)
Chapter 6
Glitch Electronica (1994~1999)
Chapter 7
Indietronica & Folktronica (2000~2006)
Chapter 8
Life and Death of Rave Culture (2007~2013)
Chapter 9
Now (2014~2018)
このタイトルを目にした方がたの多くは、まずそこに戸惑いを覚えることだろう。でも、まさにそこにこそこの本の秘密がある。
IDMすなわちインテリジェント・ダンス・ミュージックという言葉は90年代に作られたものだ。それはハウス・ミュージックより後に生まれた概念であり、ダンスを出自としながらそこに留まらないことを希求する、ひとつのオルタナティヴな態度でもある。とはいえ、その言葉に含まれる「インテリジェント」という部分がどうしても「それ以外のダンス・ミュージックには知性がない」というニュアンスを帯びてしまうため、その呼称を忌避する者も多い。それゆえUKや欧州では当時からエレクトロニカという言葉も用いられ続けてきたわけだが、不思議なことに合衆国ではその語はプロディジーやケミカル・ブラザーズのような音楽を指すために使われることとなった。このような奇妙なねじれ、このような言葉の揺らぎそのものに、IDM/エレクトロニカという音楽の持つ特質、すなわちそれを他とわかつ決定的な指標が潜んでいるのではないか? であるなら、その前史を振り返ってみることもまた有意義なことなのではないか?
とまあ、堅苦しい言い方になってしまったけれど、本書はディスクガイドである。IDM/エレクトロニカとはいったいなんなのか――それについてどう考えるにせよ、その中心にエイフェックスがいることは間違いない。近年では、彼を筆頭とする90年代のIDM/エレクトロニカから大いに影響を受けたラナーク・アートファックスのような新世代が台頭してきている。あるいはそこに〈CPU〉やブレインウォルツェラ、バイセップやダニエル・エイヴリーなどの名をつけ加えてもいい。昨年『ピッチフォーク』が「The 50 Best IDM Albums of All Time」という特集を組んだことも話題となった。いま、90年代前半に起こった音楽的旋回がさまざまな形で参照され、新たな意味を帯びはじめている。
そのような今日だからこそ、この『IDM definitive 1958 - 2018』はあなたに音楽の新たな聴き方を提供する。エイフェックスを起点として過去と未来とその双方に向けて放たれた無数の矢、選び抜かれた800枚以上のタイトルがいま、あなたに聴かれることを待っている。
IDM definitive 1958 – 2018
監修・文:三田格
協力・文:デンシノオト
文:野田努、松村正人、木津毅、小林拓音
<目次>
Chapter 1
Musique concrète / Synthesizer Music (1958~1965)
Chapter 2
Sound Effects (1966~1971)
Chapter 3
Improvisation / Composition (1972~1979)
Chapter 4
New Wave / Industrial (1980~1989)
Chapter 5
Braindance (1990~1993)
Chapter 6
Glitch Electronica (1994~1999)
Chapter 7
Indietronica & Folktronica (2000~2006)
Chapter 8
Life and Death of Rave Culture (2007~2013)
Chapter 9
Now (2014~2018)